ボランティアさんだけでは作業量が限界に。今は仕事を分け合え、お金を回せることがうれしい
フィリピンのママに雇用の機会と収入をもたらすアクセサリー
趣味でアクセサリー作りを始めたのが 9年前。師事していた先生が生徒にも仕事を振ってくれる方で、私も少しずつ出品させていただくうちに、これは仕事としてやっていけるかもしれないと思うようになりました。また、昔から発展途上国の貧困問題に関心があり、アフリカのウガンダの子どもに寄付をする「チャイルド・スポンサー」もしていたのですが、途上国支援とアクセサリー作りがうまくつながらないだろうか、と考えるようにもなりました。
ちょうどその頃に知ったのが「フェアトレード」という考え方です。途上国で作られた製品を適正な価格で継続して取り引きすることで、生産者の生活向上を支えようというもの。「そうか、作る段階から途上国の人に関わってもらえばいいんだ」と思い、2010年の秋に初めてフィリピンへ行き、現地のお母さんに向けてアクセサリー作りのワークショップを開き、フェアトレードアクセサリーを作り始めました。
ボランティアさんだけでは回せない仕事量になってきた
その後、個人事業として登録し、数年間は事業を理解し、協力していただける、プロフェッショナルなボランティアであるプロボノの方を募り、何人かに集まっていただき仕事を回していました。事業の運営や商品企画の相談、催事での販売まで、いろんな業務を手伝ってもらっていましたね。事業資金の少ない初期の頃にお手伝いいただき、本当にプロボノさんには助けていただきました。ただ、みなさん普段はお仕事をされているので、土日や手の空いている時だけしかお願いできません。そのうち仕事がだんだん増えてくると、プロボノさんのお手伝いだけでは作業を回せない状況に……。2、3年前からは誰かしっかり関わってくれる人が欲しい、でも社員さんを雇える資金はないので、週3回くらいパートに来てくれる方がいないだろうか、と考えるようになりました。一度、3人の子育て中のママさんが働きたいと応募くださり、勤務していただくことにもなったのですが、お子さんの持病が悪化して休みがちになり、最後には辞めざるを得ないことになりました。
業務を切り出して依頼することで精神的にもラクになりました
そんな時、プロボノとして手伝ってもらっていた人の紹介で、Polarisさんの事務所にお伺いすることになりました。ちょうど1年ほど前です。それ以前からPolarisさんが近くの仙川にあることを知っていましたし、講演を聞きに行ったこともあり、ずっと私のなかで気になる存在でした。なので紹介されて、すぐに行く!と(笑)。
お会いして、まずは私が困っていることをリストアップし、Polarisさんができることを伺 い、マッチングできるところを探しました。そして何度か打ち合わせをし、初めはアクセサリーの梱包作業を、次いで展示会に出す商品の値札つけなどもお願いすることに。これまでだとプロボノさんに連絡をし、時間もこちらで設定し、1人当たり1時間でいくつ梱包できるから何人必要で…と、すべて私が段取りを組まなければいけなかったのですが、Polarisさんには納期さえ伝えて任せればOK。いつも安心して納品日を迎えられ、昨年は忙しいシーズンも無事に乗り越えることができました。
仕事を分け合えば、お金も回る。それでみんなが幸せなら満足
セタガヤ庶務部のみなさんは子育てをしながら働きたいというメンバーなので、“お母さんと子ども”をキーワードに事業を行うフェリーズとしては、パートナーとして相性ピッタリだ と感じています。子育て中は不意の出来事も多く、思い通りに進まないことが多いもの。だから、ひとりのママにパートとしてお願いするよ りも、庶務部のみなさんにチームを組んで仕事に取り組んでいただくことで、そのリスクを減らせるのではないかとも思っています。フィリピンのママだけでなく、日本のママたちにもお金を回せることはとてもうれしいですし、Polarisさんにお支払いすることで、自分はこれだけ貢献できたんだと感じる喜びもあります。
これまでは梱包作業を中心にお願いしてきましたが、さらに在庫チェックや書類整理、現地への発注や商品発送などの雑務全般も手伝ってもらえないかと相談中です。とにかく私じゃなくてもできる仕事を誰かに託して、私はデザインを考えたり商品のサンプルを作ることに集中したいですね。アクセサリーを作ったり、予算計画を立てたり、営業に行ったりできるのは私だけですから。そのためにも庶務部のみなさんにチームを組んで引き受けてもらえると、助かるなと思っています。
目標は利益や事業の拡大ではなく地域の人と生き生きと暮らすこと
私が目指しているのは、普通の人が普通のお店で手に取れるフェアトレードアクセサリー。フェアトレード専門ショップや高級感のあるお店ではなく、駅前などにあるお店で売られているほうが、フェアトレードを知らない人にも興味を持ってもらえるはずです。気軽に商品が買えて、少し利益が出て、それでまたみんなで商品を作って、という流れができるのが理想。ひとりじゃできないことでもみんなで協力すれば、できるようになることもある、それを実現したいですね。子育て中は住んでいる場所と働く場所が近い方が便利ですし、Polarisさんが仙川にあって本当によかったです。
昨年11月に現地のリーダー夫婦が来日。「陳列された商品を見て、こんなに綺麗になって!と感激していました」と、フェリーズ代表・デザイナーの柿本可奈子さん(写真右)。