2024年3月16日(土)、「コミュニティフォーラム2024」がNPO法人CRファクトリー主催で開かれ、非営利型株式会社Polarisファウンダーの市川望美が登壇しました。このイベントは、さまざまな形でコミュニティ運営に関わる方が集まり、多様な視点でトークセッションを展開するもので、10年以上前から毎年開催されています。
本記事では、「コミュニティフォーラム2024」において、自分の可能性の広がりや意義など、人生を豊かにするためのコミュニティ参加へのヒントが詰まった講演内容をレポートします。
コミュニティフォーラムでは、「みんなの新たな一歩! 共に楽しみ、共につくり、共に学ぶ」というメインテーマのもと、4つの分科会が設けられました。
市川が登壇した分科会では、「社会参加✕コミュニティ コミュニティ参加で人生はもっと豊かになる」をテーマに、プレゼンやトークセッションを展開。パートナー登壇者は、武蔵小杉につながる人たちが自由に集う学び舎、「こすぎの大学」を企画・運営されている岡本克彦氏と、マンパワーグループでキャリア開発のシニアコンサルタントをされている難波猛氏のお二人。それぞれのコミュニティへの関わり方の紹介から始まりました。
まず岡本氏からは、企画運営している“こすぎの大学”の話や真の自立の話、難波氏からは不安定な時代に生き、働くという前例のない状況にあって、キャリア形成の観点からコミュニティに参加することで生まれる効果や効能について語られました。続いて市川からは、「“コミュニティ”×はたらく ⾃分の枠と可能性を広げるコミュニティの⼒」と題したプレゼンがなされました。
市川「身を置いて20年が経過したコミュニティについて振り返ると、キャリア開拓や共創、創発といった、誰かと何かを偶然に生み出す機会に恵まれたという実感と共に、自分の人生にもいい影響があったなと思っています。
私自身は、9年間の会社員生活を経て、出産を機に退職をしました。出産後に子育てのコミュニティに参加し、全く新しい価値観や世界に数多く出会ったり接したりしてきました。その中で、驚き、違和感、戸惑いをおぼえることもありましたが、知らないことがまだまだあると知ること、「自分ってこういう人間だ」という自分の定義以上に世界は広くて深いことなど、気づきや発見の連続でした。コミュニティに関わることに慣れていくうちに、気がつけば20年経っていて、自分自身も大きく変化していました。
そんな中で、自分なりに見つけた、コミュニティ参加の意義があります。
自分自身の再発見と再構成、再構築ができること。
とりあえず参加してみたら、意外と面白くて楽しめるかもしれないといった自分の新たな一面を発見できたのは、コミュニティに参加したからこそです。そうすることで、自分の伸びしろや余白に気がついて、『この先きっと自分は大丈夫だ』という、緩やかで揺るぎない安心感を手に入れられたと思っています」
続いて分科会はトークセッションへ。初めのテーマは「コミュニティ参加の効果効用」。コミュニティに参加することで、どんな効果があったのかを3人が語り合います。まず岡本氏は「地元に友人や頼れる相手ができて、こすぎの大学を企画運営するようになった」、難波氏は「人からの誘いに乗り続けた結果、マラソンが趣味になり、他の人にも勧めるようになった」と、自身に起きた大きな変化を示していました。続いて同じ問いに、市川は次のように話しました。
市川「コミュニティ参加は、自己探求に一番役に立つと実感しています。元々、馴れ合うような付き合いは苦手で、ママ友付き合いも無理だと思っていたので、コミュニティや集まりに誘われても断っていました。でも、あるときからそういった誘いにのっかってみることにしたんです。子育て期って、人に頼らざるを得なかったり、自分を捨てなきゃいけなかったりする時期だと思うんですが、とりあえずコミュニティに参加してみたことで、人と関わることがそんなに怖くないことに気づきました。コミュニティに深く関わると、変わり得る自分を見出せるし、変わらない自分、私が私でいていいんだということを再確認できました。
知らない人と何かをすることに慣れると、たいていのことは何とかなるだろうと思えるようになりましたし、想定外のことが起こることにも、耐性がついて寛容になれました。ネガティブケイパビリティが高まったと言えるかもしれません。こんな感じで、自分自身がダイナミックに変化しました」
トークセッションのもう一つのテーマは、「自分に合ったコミュニティを探して見つけて、参加するためにはどうすればいいか」。
「入りやすくて抜けやすいコミュニティがいいですね。自分が主催者側であれば、誰でも参加しやすく離脱しやすいようハードルを低くすること、主催者側がまずは楽しむこと、それを徐々にコミュニティ全体に広げていくことを心がけています」と、コミュニティ運営者の観点から岡本氏が意見を述べました。
これに対して難波氏は、キャリアの8割は偶然から生まれているという、計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory:クランボルツ提唱)を紹介。計画された偶発性を活かしてキャリアを豊かに展開するためには、好奇心と柔軟性が必要であることから、「人から誘われた時に、とりあえずYESと言ってみること」の重要性を語りました。
続いて市川からは、自分のスタート時点を振り返りつつ、コミュニティ主催者側・参加者側両方の関わり方について話しました。
市川「私自身がコミュニティに慣れていない頃、誘ってくれる方が、『絶対あなたに合ってるから』と言うんじゃなくて、『もしよかったら参加してみてね』と何度も声を掛けてくれました。声をかける側からしたら、相手から断られるのはしんどいと思うんです。でも、1回断わられたからといってそこで諦めてしまうのではなく、『参加するかしないかはあくまであなた次第ですよ』と相手の逃げ道をつくりながら、何度も声をかけているんです。その結果、『参加してみようかな』という変化が起こる人もいるので、『来てくれたら嬉しいな』と何回も誘ってみると、案外大丈夫かもしれません。
それから、コミュニティは自分が運営側だけでなく、参加者としても複数所属していたほうがいいと思います。普段の自分を固定化しないで済むところに身を置けると、すごく健全でいられるし、ウィークタイズ(Weak Ties/弱い結びつき:グラノベッター提唱)のような、緩やかなつながりの方が、実は創発や共創が起きやすいと言われています」
トークセッションの後には、グループワークとして参加者数名ずつでグループを作り、感想を語り合う場が設けられ、大いに盛り上がりました。分科会の最後に、岡本氏は、コミュニティでの学習成果をビジネスなどの他の場面でも活かすことの大切さを、難波氏は、周りの人を巻き込むには楽しいという感情を素直に表現することが一番であると、それぞれ話しました。ここでは、市川が発信した言葉をご紹介します。
市川「3ヶ月はとりあえずチャレンジ期間と決めて取り組んでみるとか、『分からないことが増えるのは、自分の人生が豊かになる』というマインドセットをして臨むと、案外怖くないですし、新しい世界に踏み出しやすくなります。それから、最初は何となく合わないなと感じていても、参加を続けていくうちに『あれ、意外と合うかも』というコミュニティと出会えるので、『何事もまずはお試し』と緩くしてみると、自分に合ったコミュニティを探しやすくなります。
春は新しいことを始めるのに向いているので、何かトライしてみたいなと思ったらぜひ始めてみてもいいと思います。でも同様に、終わらせたいことがあれば終わらせるのも大事です。始めたいことを無理に探そうとするのではなく、何かをやめてみるとか、何かから脱したいという気持ちを大切にして行動すると、発見があるかもしれないですし、おすすめです。日々を大切に生きることで、人生はきっと楽しくなります。ぜひコミュニティに参加して自己探求してみましょう」
知らない世界に飛び込むには勇気が必要で、少し怖く感じたり、本当に大丈夫だろうかと不安になったり、そこまで深く関わるつもりではないなど、いろいろと考えがちです。しかし、「今日は何となく大丈夫そうだ」と思った時に、誘いを受けたら思い切ってのってみる。期限を決めてトライしてみて、無理だったら離れてもいい。そんな自由さと軽やかさがあれば、VUCAの時代と言われる現代を生きていけるのかもしれません。最後に、人生を楽しむ難波氏のコメントをご紹介します。
「人からの誘いにとにかくYESと言い続けると、よく分からないところに人生は連れてってくれる」
まだ見ぬ自分と、向き合ってみたくなりますね。