Polarisは「誰もが心地よく暮らしはたらくことを選択できる社会の実現」をビジョンに掲げ、多様で柔軟なはたらき方のための事業を行っています。組織を「仕事軸のコミュニティ」と捉え、関わるメンバーが健やかにはたらける組織づくりを目指してきました。
このたび、リビングラボ*の視点からPolarisを紐解き、これからの「組織と個人の関係性」について考えるトークイベントを2024年6月7日(金)に開催しました。今回はその模様をレポートします。
*リビングラボとは、産官学民がそれぞれのセクターを超えて新たな価値を共創する、オープンイノベーションのプラットフォーム
一般社団法人日本リビングラボネットワークのWEBサイトより引用
日時:2024年6月7日(金)10:00〜13:30
場所:アンドエス | 石神井のコミュニティスペース
練馬区上石神井三丁目19番5-110(Brillia City 石神井公園 ATLAS 5号棟1階)
登壇者
一般社団法人日本リビングラボネットワーク代表理事 木村篤信
一般財団法人ウェルネスサポート Lab 笠淑美
Polaris 取締役ファウンダー 市川望美
Polaris 取締役 山本弥和
Polarisは福岡に拠点を置くProject Mariage(一般財団法人ウェルネスサポートLab、株式会社TAP、株式会社YOUI)と、2024年6月より「心地よく働くためのコミュニティ検証」共同プロジェクトを始動させました。本プロジェクトは「自分らしく心地よく働く」人々を育み、コミュニティを形成し、その価値を探索的に検証、評価することを目的としています。今回のイベントは、本プロジェクトの一環として、リビングラボの実践者・研究者である、一般社団法人日本リビングラボネットワーク代表理事、木村篤信さんをお招きして開催しました。
イベントは、「心地よく、共にはたらく」という言葉について思うことを、参加者同士で話し合うことからスタートしました。イベントには、地域のコミュニティ形成に関わる方や、「コミュニティ」についての研究を行っている方、地域に根差したはたらき方を模索している方などが参加。
―今まで「心地よさ」と「はたらくこと」を繋げて考えたことがなかった。
―そもそも「心地よさ」とは何かいう疑問を持った。
など、さまざまな意見が出てきました。
続いて、Polarisの山本弥和・市川望美より、自分たちがリビングラボに着目した理由について説明。Polarisは「どうしたら、はたらくということをもっとポジティブなものにできるだろうか」と、創業以来向き合ってきた問いがあります。リビングラボの概念を通じて、Polarisの活動を読み解くと、この問いに対するヒントが見つかるのではないか、と市川は言います。
Polarisでは、はたらくことをポジティブなものにするため、以下の4点を大切にした組織づくりを行ってきました。
・はたらく主体性を取り戻し、はたらく面白さを感じられること
・それぞれの心地よさを尊重すること
・違いを前提に始めること
・仕事を通して、他者理解や自己理解が進み、他人と共に自由に生きられるようになること
たとえばPolarisでは、暮らしと仕事を分断せず、日常の些細なことを業務チーム内で共有することも大事にしています。それは、丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、一人ひとりの主体性を発揮し、共創するための関係性をつくると考えているためで、その関係性を「仕事軸のコミュニティ」と呼んでいます。
一方、「リビングラボ」とは、立場や所属を超えた共創活動を指します。その概念は、Polarisのコミュティづくりに重なる部分が多くあります。リビングラボの概念を活用することで、Polarisがつくってきたはたらく仕組みづくりをより社会に広げていきたい、と市川は語りました。
続いて、一般社団法人日本リビングラボネットワーク代表理事、木村篤信さんより、リビングラボについてご説明いただきました。
リビングラボとは、企業・行政・NPOなど、産官学民のさまざまなステークホルダー同士のオープンイノベーションを、生活の場で実証すること。簡単に言い換えると、「現場で学びを得ながら、関わり合うみんなで、必要なものを自らつくること」だと言えます。木村さんは「自分たちの社会・未来を自分たちでつくっていく」という姿勢を“リビングラボモード”と呼び、その姿勢こそ、組織による障壁に阻まれず、仕事や活動を社会の価値に繋げる手段とする1ために必要なものであると話されました。
ただし日本では、「社会を自分たちでつくる」という意識が欧米に比べると低い傾向があります。当事者による主体的な活動が起き、それがみんなの活動へ拡がるには、まず関係性づくりが必要だと木村さんは言います。社会や未来について自由に、安心して語り合える場と、自然と動きたくなるような意欲がじっくりと醸成されること、さらに活動をエンパワメントしてくれる人の存在が、重要とのことでした。
木村さんの話を受けて、会場からは、住んでいる地域での活動や、自分の仕事やはたらき方と照らし合わせ、身近にある“リビングラボモード”について、感想の声が寄せられました。
最後に、Polaris市川・山本、木村さん、そして一般財団法人ウェルネスサポートLab代表の笠淑美さんの4人でクロストークを行いました。
まずは、笠さんが健やかに働くために心がけていることを共有することからクロストークがスタート。不安や不調は誰でも常に抱えているものであり、無理になくそうとするのではなく、自分が健康的であるためのボーダーラインを理解しておくことが大切だと話されました。
「心地よさ」、「ウェルビーイング」という言葉を聞くと、「良い状態」であらねばというプレッシャーを感じることがあります。「不安や不調は誰にでもあるもの」という笠さんの指摘から、弱さを前提とし、互いに補い合う組織・コミュニティの必要性を改めて感じます。
続いて、山本からアンドエスでのコミュニティを、リビングラボモードにするコツについて質問。アンドエスは、Brillia City石神井公園ATLAS内にあるコミュニティスペースですが、マンション住民だけでなく、地域にも開かれた場としてコワーキングスペースなどを提供しています。オープンして約半年。少しずつ訪れる人が増えており、スペース内にある本棚の店主(本棚ひと棚をオーナーとしてレンタルし、書籍販売ができる)が増えたり、住民主体のイベントが開催されたりしています。ただ、地域に認知され、広がっていくスピードはゆっくり。このままのペースで地域のコミュニティスペースとして役割を果たせているのか、自分たちの役割に不安を感じることもあると言います。
これに対して木村さんは、リビングラボには3つのパターン2があり、それぞれ生み出すものが異なると言います。関わりが生まれるパターン(①)、問題解決のパターン(②)、新しい意味を生み出すパターン(③)があり、①では関わりを生むこと、②では問題を解決すること、③では新しい意味を生み出すことがねらいだそうです。何を目指している状態なのかによって、やるべきことは変わってくるようです。
これを受けて、今のアンドエスの状態は、①のパターンであり、共創の土壌となる関係性が生まれているのであれば、それは今の段階では、あるべき姿なのかもしれません。リビングラボの視点で整理すると、コミュニティという価値判断の難しいものも客観的に捉えることができるとわかりました。
クロストーク終了後は、参加者全員で感想をシェア。さらに、ランチ交流会を開催し、それぞれの現場でのリビングラボ実践事例や、組織を超えた共創の難しさなどについて、盛り上がりました。
Polarisは、「未来におけるあたりまえのはたらきかたを創る」ことをミッションに掲げ、「誰もが暮らしやすく、はたらきやすい社会の実現」を目指し、多様で柔軟なはたらき方を実現するための事業」に取り組んでいます。今後も、組織運営における「仕事軸のコミュニティ」づくりにおける知見をさまざまな視点から検証し、社会へと還元していきたいと考えています。