海から離れた調布で養殖管理ソフトを開発|調布ではたらく人のお話 vo.1

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海から離れた調布で養殖管理ソフトを開発|調布ではたらく人のお話 vo.1

調布ではたらく インタビュー

新 真理さん(あたらし まこと)Aquacraft 株式会社
大学卒業後、開発会社でシステム開発を担当。元同僚とAquacraft株式会社を設立。水産業のデジタル化を目指し、「ひとりエンジニア」として働く。
Aquacraft株式会社uwotech(うおてっく)

新 真理さんの仕事は、魚類養殖の生産に関わるデータを分析し、経営改善につなげるクラウド型養殖管理ソフト「uwotech(うおてっく)」の開発。「調布は仕事に没頭できる環境がある一方で、趣味のテニスも存分に楽しむことが出来て、気に入っています」と表情を緩めます。

元々、会社員としてシステム開発を担当していた新さん。そのまま会社員エンジニアとしてのキャリアを重ねる選択肢もありましたが、起業を考え始めた友人と意気投合し、会社を設立しました。以前の勤務先は、東京都港区浜松町。調布で働くことになったのは、奥さんの職場に合わせた結果だそうです。

「浜松町は良くも悪くもビジネス街なので、気疲れすることが多かったんです。調布はゆったりとした雰囲気でありながら、適度に都会。必要なものは何でもそろうので、住み心地の良さと利便性を兼ね備えた魅力があります」

作業場所はコワーキングスペース。生簀の配置図を画面上に再現

自身が開発を手掛けるuwotechは、タイやブリなどの魚を養殖している生簀の配置図を画面上に再現。それぞれの生簀の魚の数、病気や死んだ魚の数、投入した餌の量、水温などを登録します。稚魚の時期からこれらのデータを蓄積することで「今何円で魚を作っているのか」が即座に分かるようにしました。

uwotechのユーザー画面。現場でスマホ入力できる手軽さが好評。

「天然魚の漁師と比較すると、養殖は生産者自身が生産計画を立て、いつ、どこに売るかを決めやすいため、データをデジタルで管理するメリットが大きいのです。この分野なら自分たちの得意領域を活かしやすいのでは、と思いました」

月に1回程度、高知や愛媛、鹿児島などの生産現場に出張します。一緒に船に乗り、食事をとりながら現場の課題やuwotechの改善点などについて話し合うこともありますが、基本的にはデスクワーク。調布駅に近いコワーキングスペース「co-ba CHOFU」で仕事に没頭します。

育てる漁業の状況を変え世界と戦える産業に

養殖事業に関わり、現場にも密着するようになり、知ったことがいくつもあります。

生産者の人たちは毎日、それぞれの生簀への給餌量や魚の様子を紙やノートに記録しています。中にはそれらの手書きデータを作業後にエクセルに転記する人もいます。けれども、振り返りやデータ分析を通じて何らかの改善に繋げられているケースはほとんど無いのが現状でした。結果、魚を売り切った後で計算すると、大きな赤字に気付くということも少なくありませんでした。

「捕る漁業から育てる漁業へ、と言いますが、日本は世界の中でも珍しく水産養殖の売り上げが落ちていて、従事者も減り、高齢化も進んでいます。例えばノルウェーでは最先端技術の活用にも積極的で、養殖業はあこがれの職業のひとつです。日本の状況をuwotechで変えたいと思っています」

朝7時から夜12時まで仕事し、土・日曜もコワーキングスペースに出向くことも!

気分転換に多摩川沿いを散歩。早朝や夜に週2〜3回のテニス

仕事とプライベートを分けないのも、新さんの働き方の特徴です。

「開発に行き詰まったときは、散歩します。 調布駅の周辺や多摩川沿いなど、1時間以上歩くこともあります。夕方は一旦帰って夕食を準備します。頭を整理するために料理をすることもあって、妻に喜ばれますね」

そして、生活に欠かせないのがテニス。早朝か夜に週2〜3日、1回に2〜3時間、知り合いたちと市内のコートで汗を流します。
「何よりテニス仲間が多いのがいいです。仕事かテニスをしていれば、大体元気です」
ちょうどいい暮らしやすさが、働くことに好影響をもたらしているようです。

文 三澤一孔、写真 石野祐子