夫の転勤に同行するために退職した妻は、その後、仕事をしたくても、ハードルが多く、一歩踏み出しにくいことがあるようです。
「いつ夫の辞令が下りるか分からないため、仕事に就きづらい」
「見知らぬ土地で知り合いがおらず、社会とのつながりが持ちづらい」
「今は仕事が出来ていても、転勤したら、ゼロからのスタートになる」
こんなモヤモヤを抱える転勤族の妻は、「未来におけるあたりまえのはたらき方をつくる」をミッションとする会社、Polarisにもいます。彼女たちは「はたらくこと」をどのように選んできたのでしょうか。転勤族の妻だからこその悩みや自分の求めるはたらき方について聞いてみました。
【お話をうかがった方】
みさとさん:大阪府在住。夫、長男(小2)、長女(年中)の4人家族。Polaris歴4年半。
Polarisでは、音声起こしやアンケート集計などの単発の業務からスタート。その後、地域情報提供業務(くらしのくうき)のコンシェルジュ、イベント運営、事務局等を担当。2018年からはコーディネーターとして業務設計を担う。
なおみさん:兵庫県在住。夫、長女(小3)、長男(年中)の4人家族。Polaris歴7年。
Polarisでは、アンケート集計やテレビ番組の文字起こしなど、子どもが寝てからできる単発業務を担当。子どもの成長と共に地域情報提供業務(くらしのくうき)のコンシェルジュ、地域経済新聞記者、社内報の立ち上げ、企画、デスクを担当。関西へ転勤後は、Polarisの関西展開を事務局としてサポート。
さとかさん:東京都在住。夫、長男(小1)、長女(年中)の4人家族。Polaris歴4年。
Polarisでは、地域情報提供業務(くらしのくうき)のコンシェルジュをきっかけに、商業施設のワークショップ企画運営、イベント企画運営、事務局等に携わる。現在は、広報として自社SNSの運用、WEB記事のライティングのほか、co-ba CHOFUのコミュニティマネージャーとして活躍しながら、Polarisのバックオフィスをサポートしている。
【INDEX】
――“転勤族の妻”になる前の皆さんのお仕事の状況を教えてください。
みさと:
ライフステージが変わるまでは全力で仕事をしたいと思っており、3年ごとに転勤がある、銀行の法人営業をしていました。
接待や残業が多い部署のため、仕事と家庭の両立は難しいと感じており、「どこかで選択が必要になる」と、入社時から思っていました。
そんななか転勤族の夫と結婚し、二人ともそろそろ転勤を迎える時期。別居婚を選んで今の仕事を続ける、という選択肢は持っておらず、職種転換もかなわず、退職を選びました。
なおみ:
私は、「結婚しても子どもができても、ずっと仕事は続けたい」という意思を持ちながらも、具体的にどのようにキャリア形成していくかのイメージができていませんでした。転勤族の夫との結婚を上司に報告した際、「旦那さんが転勤になったら仕事は辞めるの?」と言われ、急に現実を突きつけられたのを覚えています。それ以来、「転勤になったら退職する」という思考パターンができてしまい、夫の転勤をきっかけに退職。転勤先は小さな地方都市で、たまたま条件の合ったパート事務の仕事に就きましたが、長女を授かったタイミングで辞めることになりました。
さとか:
私が新卒で入社した会社は、配偶者の転勤について自分も帯同ができる制度がありました。入社前から「自分はその制度を使って、もし転勤族の人と結婚しても、子どもを持っても仕事を続けるんだ!」と意気込んでいました。
しかし、会社で人事や秘書の仕事に携わると、その制度の利用が周囲に歓迎されないと感じるようになりました。その後、同じ会社の夫と結婚し、夫の転勤が決まった際は、社内の空気を読んで、帯同制度を選ばず、退職を選択。転勤先では、夫の急な転勤や妊娠した際に迷惑にならないよう、契約社員や短期派遣の仕事を続けていました。
――皆さん、共通して“はたらき続けたい”という思いはあるものの、家庭との両立を考えた際に辞めざるを得なかったり、次の転勤への懸念から、新しく仕事を探すことに積極的になれなかったりしたようですね。
今のPolarisのはたらき方に出会ったのは、どのようなきっかけでしょうか。
みさと:
仕事を辞めてからは、バリバリ働いていた頃のようなプレッシャーやストレスからは解放されたものの、自分が無価値になったように感じました。納得して辞めたはずなのに、とても辛い時期を過ごしていました。
産後、「子どもが小さいうちは一緒にいたい」「長期的な仕事は転勤の際に迷惑がかかるのでできない」とはたらくことを制限する自分がいる一方で、「仕事がしたい」という気持ちは常にありました。
離職期間が長いと不安が増すため、資格を取ったり、在宅で単発の翻訳業務をしたり、何か活動をすることで不安を埋めているような日々でした。そのころ、Polarisのセタガヤ庶務部(在宅ワークシェア事業)の存在を大学の先輩から教えてもらい、登録へ行きました。
なおみ:
私は、仕事を辞めて娘が生まれてからは、「せっかくだから全国の転勤先の土地を楽しみながら、家族で過ごす時間を大切にしよう。そういう生き方も、幸せのひとつのカタチだ」というこれまでの自分にはなかった価値観を持てるようになっていました。
振り返ると、良くも悪くも、転勤という大きな波のうねりに乗って半強制的に思考の流れを変えられ、自分の中でのパラダイムシフトが起きていたように思います。
ですが、この時の私はこうした気持ちをきちんと言語化することができず、「仕事も育児も100%!」という社会の理想にモヤモヤしながら、何が正解なのか、解決策は何なのかを模索していました。そんな中、出会ったのがPolarisでした。
さとか:
私も最初の転勤地の大阪で子どもが生まれてからは、「転勤を楽しもう!」という考えにちょうどシフトしていました。ただそれは、「今ははたらけないから、転勤を楽しもう」という諦めが入ったものでした。
同期や後輩が楽しそうに仕事をしているのをSNSで見ると、「もし辞めていなかったら今頃は…」と何度も考えることがありました。会社の名刺を失った自分は、何者でもなくなった、今まで積み上げてきたキャリアって何だったんだと落ち込んだことも。でも、またいつかそのタイミングがくるはずと、自分自身に言い聞かせていました。
転勤で東京に来た際は、子どもが1歳だったこともあり、すぐに仕事をしたいという気持ちはなく、何かのコミュニティに属したら知り合いが増えるかな、という軽い気持ちで、知人から教えてもらったPolarisの登録に行きました。
―――皆さん、ここなら何か見つかるかな、と様々な思いも持ってPolarisと出会ったわけですが、実際Polarisで仕事をはじめてから心境の変化などはありましたか。
みさと:
子育てとは違う世界を持てたことで、狭い世界にいるという不安は少なくなりました。
また、Polarisの運営に関わるようになると、今の在り方を自ら選択して、変化を楽しんでいる人たちに出会いました。その姿がとても新鮮で、新しい価値観をもたらしてくれました。
今はPolarisの他にも人材紹介の会社で業務委託として働いているのですが、Polarisの経験がなければ挑戦することはなかっただろうなと思っています。
なおみ:
私は自宅で子育てをしながらも、仕事ができることが何よりありがたかったです。「はたらく=子どもを預ける」が当たり前だと思っていたので、時間や場所にとらわれないはたらき方に出会えたことは、現在の自分の考えにも大きく影響を与えています。
また、Polarisという仕事軸の地域コミュニティに入れたことで、転勤先の見知らぬ土地でも自然と仲間ができ、仕事を通じて自分の住む地域の魅力をたくさん知ることができました。その街で暮らす人や働く人と一緒に、街づくりに関わったり、人と人をつなぐ仕事をしたり…おかげで街の小さな変化でも大きく興味を持って自分ごとのように見られるようになりました。仕事が軸となるPolarisの仲間とは、遠く離れても、いつでも一緒にはたらける気がします。これは、転勤族として数年その街に住み着いただけでは得られなかった財産だと強く思います。
さとか:
今ではテレワークという言葉も、当たり前になってきましたが、私がPolarisに登録した2015年はまだ、子どもがいながらも自宅で好きな時間にはたらけるというのは、新しいはたらき方でした。「こんなはたらき方があるんだ」と感動したのを覚えています。
また2人目を妊娠して、「妊娠出産でブランクが空いてしまう…」と不安に思っていた際、「子育てもキャリアだよ」という声をかけていただき、気持ちがとても楽になりました。
今までは「子育てや暮らし」と「はたらくこと」は全く別と考えていましたが、Polarisの暮らすとはたらくがここちよく混じり合っているスタイルが、自分のはたらき方の価値観を大きく変えてくれました。
―――みさとさんとなおみさんは、Polarisで仕事をはじめてからも転勤があったそうですが、転勤の前後で変化はありましたか。
みさと:
昨年3月に、転勤ではないのですが長男の進学を機に、関西で定住・夫は単身赴任生活という形で東京から引っ越しすることになりました。
もともと転勤がいつあるか分からないということもあり、すべてオンラインで完結する案件を中心に担当しています。引っ越しの前後2~3日は稼働できなかったのですが、ChatWorkや業務の状況はPC一つで確認できたため、業務として何か引継ぎが発生することは全くありませんでした。
引っ越してからも引き続き関西からコーディネーターとして業務に関わっていますが、本当に何も変わっておらず、改めてありがたいな、と思っています。
なおみ:
子どもが幼稚園に上がり少し手が離れ、もっとPolarisの業務に積極的に関わっていきたいと思っていた矢先に夫の転勤辞令がおりました。やっと面白くなってきてこれからなのに!というタイミングだったので、悔しい気持ちが強かったです。
ただ、仕事の内容ややり方は大きく変わることはありませんでした。スペース運営や新聞記事の取材など場所ありきの仕事はできなくなりましたが、オンラインでできる業務が多かったので、引越後も続けることができました。転勤先が関西だったため、関西の地域情報提供コンシェルジュや京都のコワーキングスペース運営といったPolarisの関西進出案件に現地で関わることができたのは、良い経験になりました。
ただ、オンサイト(現地対応)業務で他のメンバーが顔をつき合わせて仕事をしているのを見ると羨ましく、正直寂しい気持ちになることもありますね。
―――オンサイト(現地対応)の業務は距離の問題を超えられませんが、Polarisがもともとオンライン業務が中心だったことで、引越し後も変わらず関われたようですね。
それでは最後に、皆さんの今後の展望を教えてください!
みさと:
居住地を定めたので、子どもたちが大きくなるまでは私も動かない予定です。
オンラインでの業務は通勤がないので効率もよく好きなのですが、コロナ禍で人と会うこと・接することについて改めて大切だなと思い、定住したからこそ会える距離の仕事もしてみたいな、と思っています。子どもの成長に応じて仕事に充てられる時間も増えていくので、今自分がこれからしたいことを考えているところです。
なおみ:
現在は私の地元に自宅を購入したため、今後、夫の転勤は単身赴任で行ってもらう予定です。そのため、ひとつの土地に腰を据えるからこそできそうな仕事に挑戦したいと考えています。
さとか:
私は2人とは違って、まだまだ転勤が続きます。来年はどこにいるのか(笑)
そのときになってみないと分かりませんが、一つ言えるのは、どこにいてもPolarisの仕事軸のコミュニティは続くので、前回の転勤時のときのように、“全てを失った”という絶望や孤独の心配はもうありません。
一つでも自分の居場所があるというのは、本当に心強く、Polarisの土台があるからこそ、新たな場所でも自信を持ってチャレンジできる気がします。
転勤で新たな土地へ行くことは、誰しもすごく不安で大変なもの。
夫や子どもたちは、新たな職場や幼稚園・学校に居場所が用意されている中、妻である自分にはどこにも居場所がないことに気づき、大きな孤独を感じたことがある人も多いと思います。
Polarisのはたらき方は、もともと子育て等ではたらくことに制約がある人たちが集まっている特徴上、テレワークが基本スタイルとなっています。場所や時間にとらわれないはたらき方ができるよう、オンラインツールを使って、国内各所はもちろん、海外にいても仕事ができる仕組みをつくってきました。
Polarisの仕事軸のコミュニティがあれば、転勤後も変わりなくはたらき続けることができ、居場所があるという安心感によって、新天地でも新しいことにチャンレンジする気持ちを持つこともできます。
Polarisの柔軟で多様なはたらき方は、転勤により、はたらくことを諦めていた人たちに、はたらき続ける未来をつくれるかもしれません。