福岡県糸島市(以下、糸島市)で2024年9月から開講している「働きたい女性のためのデジタルワーク講座」。糸島市在住の女性で、デジタルツールを使った仕事に興味がある人、子育てや介護などで離職し、再就職を希望している人などを対象とした、全5回連続の講座です。その入門編として、第1回目の「軽やかにデジタルを使いこなすマインドセット」が男女共同参画センターラポールにて9月26日(木)に開かれ、弊社ファウンダーの市川望美が登壇しました。
今回は、本講座での模様をレポートします。
日時:2024年9月26日(木)10:00〜12:00
場所:男女共同参画センターラポール
講師:Polarisファウンダー 市川望美
今回の受講者を糸島市が募ったところ、定員10名に対して20名の応募がありました。年齢層も上は60代から下は30代までと幅広く、デジタルツールを使った仕事への関心が高いことが伝わってきます。
※全受講者数12名
講座は、Polarisの創業のきっかけとなった市川自身のキャリアサマリー、Polarisの創業への思いやミッション、簡単な事業の紹介からスタートしました。
ここからは、当日の講座の内容をご紹介していきます。
Polarisは、「未来におけるあたりまえのはたらきかたをつくる」をミッションに掲げ、誰もが暮らしやすく働きやすい社会の実現を目指して立ち上げた会社です。創業当初、私自身が子育てをしている当事者だったこともあり、当事者の立場から子育て中の女性たちのための組織になることを目指しました。自分の子どもたちが社会の入り口に立つ頃までに、新しい選択肢を増やしてもっと働きやすい社会にしたいと願い、現在にも未来にも希望を持てる組織になることを目指して事業を進めてきました。子育て中の人ならではの働き方への多様なニーズ(在宅ワーク、短時間、仲間など)を満たした、多様で柔軟な働き方ができる場所を整えれば、どんな人にとっても働きやすい社会になっていく、育児中の女性を含む、制約のある人々が活躍できる仕組みは、働くすべての人々にとって必要なものだと考えてのことでした。
そのため、Polarisは創業当初からデジタル技術の活用を前提としてきました。単にデジタルを活用するだけでなく、地域に根ざした暮らしを大切にしながら、いつでもどこにいても常にチームメンバーと繋がれる環境を整備しています。
デジタルツールを活用するスキルは、現代のライフスタイルを尊重しつつ、働き方を最適化するために不可欠です。実際にデジタルを使いこなせるようになると、さまざまなメリットを感じられるようになります。
まず、仕事の種類や働き方の選択肢が格段に増え、すぐにでも働くことができます。住む場所も時間も問わないので、糸島にいながら東京の会社に在籍して、他の地域に住んでいるメンバーと仕事をすることも可能です。
また、デジタルツールを活用できると、自分なりの情報の見極め方が身につき、仕事をする際のリテラシーも磨かれますし、幅広い人と仕事をすることで、仕事の仕方や考え方が広がります。すると、対応の選択肢が増え思考や発想が柔軟になり、今までの「こうあらねばならない」といった思い込みを少しだけ緩めてくれます。日々暮らす環境の中に働くことを入れていきやすくもなりますし、0か100か、ではない暮らし方や生き方を取り入れやすくなります。子どもの年齢が低いうちは、仕事をしたいというこちらの事情を察してくれないので、正直イライラしてしまうこともありますが、同じような境遇にいる仕事仲間に話すことで救われたり、共感し合えたりできます。
反面、デメリットも多くあります。デジタルツールが常にあり、いつでも仕事をできる状態が整っているので、家事や育児でちょっとした時間ができると仕事をしてしまいがちです。仕事と生活の境界線が曖昧になっていくことも、ときには負担があるかもしれません。加えて、在宅ワークは仕事の話を気軽にする相手が近くにいないので、孤独になりがちです。相談しづらくて抱え込んでしまうこともしばしばです。だからこそ、緩やかなコミュニティの中で協力し合い、こうしたデメリットを和らげる機会を意図的につくるなど、できることがたくさんあると感じています。
また、デジタルワークだとテキストベースでのやり取りがほとんどなので、顔が見えず、不安を感じることもあります。ほかにも、人によって解釈が異なる「締め切りは夕方ね」「これは急ぎで」といった指示で、行き違いが起こることも。日時を指定・確認する、コミュニケーションツールの通知時間をあらかじめ設定しておくなど、デジタルツール活用ならではの付き合い方が必須です。それから、長時間座っているので体のケアも大切です。
よりクリエイティブな仕事をしたい、事業者や経営者を目指したいと考えたときには、デジタルツールを使うだけでなく、一歩踏み込んだ視点が必要になります。それは、メンバーがより良く働けるような仕組みづくりはどうしたらいいかということや、クライアントや社会への価値提案を考えることです。
Polarisでも、ただ「デジタルツールで仕事ができます」ということを打ち出しているのではなく、「誰もが暮らしやすくはたらきやすい社会の実現」のためにはデジタルを活用した多様な働き方が必要であると考えています。さらに、その働き方自体が生み出す新しい価値を提案し続けています。
デジタルスキルを身につけて企業で働いたり起業したり、フリーランスとして業務委託で働いたりすることも可能です。ただ、アプリやシステム開発ができる、Webページのデザインが作れるといったことももちろん立派なスキルですが、最近は多様なデジタルツールがあるので、そこだけに固執する必要もありません。例えばChatGPTやGeminiといった生成AIツールをとりあえず触ってみるのも、スキルアップの一つです。上手な人に教わってみたり、逆に誰かに操作の仕方を教えたりして、自分次第で立派なスキルにできるところが、デジタルツールの良いところです。スキルを磨いた方がいいですが、「勉強しようと構えなくても、デジタルリテラシーを上げる方法は意外にたくさんある」ことを知ってほしいと思っています。
私自身、個人情報を取り込んだカードをスマートフォンで読み取る「デジタル名刺(プレーリーカード)」で、去年から名刺交換をするようになりました。「デジタルって難しそう」と身構えずに、いろいろなツールをぜひ使いこなしてみてください。
講義の後は、複数のグループに分かれ、「ジョハリの窓」*を使ってスキルと経験の棚卸しワークショップを実施。
*「ジョハリの窓」:自分と他者との認識のずれを理解するために活用される心理学モデルの一つで、アメリカ・サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)とハリー・インガム(Harrington Ingham)が考案。
受講者の皆さんは、紙を机に広げ、互いに自らの経験を話しながら4つの欄を埋めていきました。15分の制限時間はあっという間に過ぎていきましたが、グループでディスカッションしながら自分のこれまでを振り返ったことで、自らの新たな可能性に気づいた受講者も多くいたようです。
最後に、受講者から寄せられた感想の一部を抜粋してご紹介します。
「デジタル」と聞くと、馴染みがないと感じる人にはやや敬遠されがちですが、日々触れているスマートフォンから情報を発信したり、スケジュールをカレンダーアプリに入力したり、ビデオ通話を使って誰かと話したりすることもデジタル活用の一つです。さまざまなツールを上手く組み合わせ、まずは触って慣れること。自らを振り返り、スキルを棚卸ししてみることで、新たな自分に出会えるのではないでしょうか。