2021年3月1日、Polarisの事務所「cococi」と、Polaris運営の会員制コワーキングスペース「co-ba CHOFU(コーバ チョウフ)」が融合し、調布駅より徒歩1分の場所に移転しました。
Polaris新オフィス「cococi×co-ba CHOFU」紹介
内装工事をお願いしたのは、「ともにつくること」をコンセプトに、床張り・壁塗りといった施工を「DIT(Do It Together)ワークショップ」という形で進めていくKUMIKI PROJECTさんです。
コロナ禍の影響により、同じ場所で共に過ごすことが減った今だからこそ、Polarisでは、「場」に「こと」や「人」が集まり、時間を共有することを見つめ直しています。そこで起こるシナジーと、その先に描くものについて、KUMIKI PROJECTのくわばらゆうきさんと、Polarisの大槻、野澤が語り合いました。
―KUMIKI PROJECTさんは、「ともにつくること」を通じて人と場の可能性を広げるために、DITワークショップを通した空間づくりを手掛けられていますが、単に空間をつくるのではなく、「ともに」つくることにこだわる背景を教えてください。
くわばら)10年前、陸前高田市で復興支援活動をしていたのですが、その時にみんなでともにつくった集会所が、地域の人たちの居場所に変わるのを目の当たりにしました。それ以来、ともにつくることでそこが居場所になっていく、ということにこだわりたいと思って事業を行っています。
単なる場所が人の「居場所」に変わるためには、何があればいいんだろう?と考えたときに、「そこにしかない〇〇がある」と言えるといいのでは、と思いました。「好きな人たちが集まっている」「一緒に作った記憶がある」「自分が作った家具がある」といった「そこにしかない〇〇」「愛着を持って接することできるもの・こと」がその場にあることが必要だと感じています。そういった「愛着のあるもの・こと」を、ともにつくることで生み出していきたいというこだわりがあります。
愛着の生まれ方も、たまたまそこに居合わせて、たまたま一緒に一つの家具を作った、というような、偶発性の積み重ねが、愛着に変わっていくことに必要なのではないでしょうか。
コンセプトを作り込んで、デザインがきれいに作られた空間は日本中にあふれています。しかし、「居場所」を感じることは少ないように思えます。そこで、「ともにつくる」という手法を使うと、偶然の出会いが積み重なり、愛着やオリジナリティが湧いて、「居場所」になると考えています。
―Polarisは、「未来におけるあたりまえのはたらき方」を作るために、創業時からリモートワークをベースにした事業設計をしたり、履歴書に書けないキャリアを可視化したりと、会社視点ではなくはたらく側の視点で事業を創出しています。今回co-ba CHOFUの内装設計をKUMIKI PROJECTさんと一緒に進めようと思ったきっかけを教えてください。
野澤)以前よりご縁があって、くわばらくんがやっているKILTA(キルタ)という財団の評議員として参加しています。KILTAには「DITインストラクターの養成事業」があり、壁塗りや床張りといった空間づくりをしたい人たちを伴走する人を育てています。この人はDITファシリテーションにおいて「困っていたら助けるが、過剰に手は出さない」というスタンスで臨みます。
私もDITワークショップを何度か体験しましたが、参加者はDITの舞台である物件のオーナーや、DITに興味を持った、ものづくり素人の方たちでした。しかし、立場に関係なくフラットな関係性の中で、ともにつくる様子を見て、魅力を感じました。そういう作業の進め方を作り出したくわばらくんを全面的に信頼できましたし、Polarisとも親和性があると感じました。
また、Polarisの事務所もco-baに融合することになりました。co-ba CHOFUに関わる人が増えるからこそ、DITをすることで、多様な人がフラットな関係でともに「co-baにいる」ことができるよう、DITの依頼を決めました。
実際に今回の「cococi×co-ba CHOFU」の内装DITワークショップでは、co-baのコミュニティマネージャーや会員さんやその家族だけでなく、Polarisスタッフやクライアント、普段からお付き合いのある地域の方にも声をかけ、ともにつくる経験ができました。
―co-ba CHOFUの空間づくりに当たり、両者で話されていた「大事にしたいこと」について教えてください。
大槻)コミュニケーションをしやすいレイアウトやしつらえと、時には仕事の手を休めてリラックスできる場所が欲しい、というこだわりがありました。
くわばら)コンセプト文に入っていて面白いと思ったのは、「働きすぎないゆとり」ということでしたね。座席と電源だけでなく、時にはリラックスできる空間について考えていく中で、「ヒノキの床材を使った小上がり」が生まれました。リモートワークが当たり前になり、仕事と暮らしの境目も余白もなくなり、つい仕事をやりすぎてしまいがちです。コミュニケーションが活発になるには、ゆとり、余白が必要ですよね。それが、「働きすぎないゆとり」にもつながって納得でした。
―実際にワークショップを経て感じていること、その場で聞こえてきた声を教えてください。
野澤)例えばバーベキューなどで一緒に料理を作ることもできますが、家具をつくる方が共同感を強く感じました。
今回、本棚も作りましたが、木材が重くて、何人かで力を合わせないと組み立てられませんでした。誰かの手を借りないと作れない、ということが料理よりもたくさん起きたのです。
大槻)4日間のワークショップの中で、普段は役職や役割を通して関わってきた人たちが、「co-baをつくる」という協同作業を通して、まさにフラットな関係性を築くことができました。壁塗りや小上がりの床張り作業では、会員さんやスタッフのお子さんが大活躍で、大人が働く場が、子どもたちの手を借りて完成したのです。多様な人が、お互いを気遣いながら作業する様子は、とても幸せな景色でした。
そして、「ともにつくる」ことに巻き込み力の強さを感じました。自分たちが作業しているからこそ「一緒に作りませんか?」と声をかけやすく、偶然近くを通りがかった知り合いが立ち寄ってくれるなど、偶発性が積み重なっていきました。
このワークショップを通して、関わった人たちにここを「自分の居場所」だと愛着を感じてもらうことができたのでは、思っています。
くわばら)中には、参加者同士のコミュニケーションや優しさに癒されて、涙を流された参加者がいたそうですね。そんな建築の現場があるなんて聞いたことがなかったから、ああ、有難いなぁと思いました。
これは別にKUMIKIがつくる場がすごいわけではなく、僕らは鏡のような存在だと思っています。ワークショップが、依頼者の培ってきた関係性の豊かさを、分かりやすく可視化する場になっているのです。
―co-ba CHOFUで今後挑戦したいこと、「場」に期待したいことはなんでしょうか?
野澤)地域をさらに意識して、「調布の足場」の一つとして在りたいです。これから駅前再開発もあるため、景色や文化・風土・行き交う人が変わっていくと思いますが、面白くない街にはしたくないですね。「場」を作りましたが、閉じずに、街のプレイヤーがヤンチャできる場所にしていきたいと思います。
大槻)「おかえり」と言える場所になったらいいなと思っています。そして、今回作った場で人がつながった、「その先」に関心があります。コンセプトに「つながりの根を張り巡らせる」とありますが、co-baという根っこからどんな枝が伸びていくのか、とても楽しみです。
たくさんの人の手を借りて完成したcococi×co-ba CHOFU。これからも様々な「ともにつくる」を積み重ね、「つながりの根を張り巡らせる」ことでしょう。ここにしかない大樹に成長していく様子を、今まで関わってくださったみなさまと、これから出会うみなさまと共に見守っていければ幸いです。