本ゼミは、市川による修士論文『半分幸せの考察~育児離職した⼥性のライフストーリー分析による選択における個⼈と社会の関係性:A Study of “Half-Happiness”;Life Story Analysis of the Non-employed Women who Resigned due to Child Care: How They Make Life Course Decisions in the Context of the Relationship of the Individual and Society.」(2018,立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)をベースに行っていきます。
私たちは、選ばされているのかもしれない
「子どもがいて、スキルも経験もない私たちみたいな主婦は、半分幸せでもありがたいと思わないといけないんですーー。」
この言葉が、すべての探究の始まりでした。
この言葉は、育児中の女性向けのキャリアデザイン講座で講師を務めていた時にある女性が発したものです。
そこには怒りや悲しみなどの強い感情はなく、ただあたりまえのように、穏やかにこの言葉を発し、その場にいた女性たちも「そうだよねえ」と共感されていたように思えます。
その場では「そんなことないですよー、みなさんそれぞれです!」というようなことを発言しましたが、そのあともずっとこの言葉が引っかかっていました。
どうやら、同じような環境の人たちの中ではある程度共有されている感覚らしい・・
なにが「半分」なんだろう?
「半分」なのに「幸せ」なのはなぜだろう?
「幸せ」なのに「半分」なのはなぜだろう?
なぜ、ありがたいと思わなくてはいけないのだろう?いったい誰に?
これらの疑問を抱えながら、Polarisの事業を行ってきました。
また、この言葉は「スキルも経験もない」「育児中の女性」だけではなく、社会に広くに問いかける力を持っていることに気がつきました。
大手企業でバリバリと働いている独身の女性は「すごく刺さりました。私たちもきっと“半分幸せ“を抱えて生きていると思います」といい、ある男性は「僕らもきっとそうですね。でも、男は多分、半分だということに気が付かず全部だと思って生きているんじゃないですかね。意識的に他の半分に目を向けないようにしているのかもしれません」といいました。
「半分」が何を表すのかはそれぞれだけれど、なんらかの「空白」「喪失」「欠落」が潜んでいるように思えます。
ふとした会話の中で何気なく発せられた「半分幸せ」という言葉には、様々な葛藤や複雑な想い(でもすでに、乗り越えてしまったけれどくすぶる残存思念のようなもの)が内包されていて、それはどの立場の人にもありうること。
「ありがたいと思わなくてはいけない」という言葉からは、ひとりひとりの選択にはなんらかのし「圧力」が存在し、自分が選んだつもりが実は選ばされているのではないかという仮説にたどり着きます。
本ゼミでは、その仮説検証を中心とした市川の修士論文をベースに、女性たちのライフストーリー・インタビューを題材として、選択における社会的な圧力の存在や個人と社会の関係性を見ていくほか、ライフストーリーの基礎的な周辺研究の紹介、インタビューから社会的文脈を抜き出す手法の説明およびインタビュー分析の実践のほか、「新しい物語は社会を変える」という、社会的創発の観点から、ライフストーリーや物語を捉えていくことに取り組みます。
また、ゼミを通して、ご自身のライフストーリーやにも触れていくことになります。自分の人生についても考えたい、探究したいという姿勢でご参加いただけたらより豊かな時間になると思います。
※今回は「0期」として、オンライン参加も含め、実験的に行いますのであらかじめご了承ください。
#1 2/17(月)10:00-12:30【講義編1】
「半分幸せ」の考察~修士論文概略
序章 本研究の背景と目的
第1章 先行研究および分析手法
第2章 育児期の女性の働き方を取り巻く環境と課題の整理
第3章 ライフストーリー・インタビュー分析
第4章 社会変革装置としての物語
第5章 「半分幸せ」の考察結果
#2 2/27(木)10:00-12:30【講義編2】
基礎的研究ピックアップ
ライフストーリー、物語/語り、物語法、社会構成主義、ナラティブ等
#3 3/9(月)10:00-12:30【講義編3】
「選択する」ということ
選択する力と選択前提、社会のラベル、社会システムのループ、支配的な物語
#4 3/23(月)10:00-12:30【ラップアップ】
講義編まとめ、フリーディスカッション
#5 4/2(木) 10:00-12:30 【実践編1】
ライフストーリー・インタビュー
~分析手法、社会的文脈とはなにか、ライフストーリー・インタビュー実践
#6 4/23(木) 10:00-12:30【実践編2】
ライフストーリー・インタビュー分析結果シェア
ディスカッション、クロージング
時間:10:00-12:30(終了後ランチ交流なども予定)
対象:女性のライフストーリーやキャリアなどに関心がある方(専門性や経験値は問わず)、女性たちが集うコミュニティ運営や組織運営に関わる方、支援的な立場の方、研究者など
参加費:20,000円(全6回)
※初回のみ単発参加あり 4,000円
参加方法:内容は、ゼミ(全6回)か初回単発かの2種類、会場は現地(調布市仙川/cococi)とオンライン(ZOOM利用予定)の2種類があり、チケットは全部で4種類あります。お間違えないようにお申し込みください。
定員:現地(cococi)8名 オンライン 8名
※初回のみ、現地15名程度まで、オンライン参加は制限ありません
講師:市川望美
非営利型株式会社Polaris取締役ファウンダー
ソーシャルデザイン事業部統括 Chirf Story Officer
自由七科ラボメンバー
立教大学 社会デザイン研究所 研究員
主催:非営利型株式会社Polaris
リベラルアーツ・ラボ「自由七科(じゆうしちか)」
共催:立教大学社会デザイン研究所 「働き方における女性のライフストーリー研究会」
自由七科とは:自由に生きるための知恵に出会うリベラルアーツ・ラボ
変化の時代の中で多様な人とつながりながら自由に生きること、その人がその人らしくあること、仕事とその人がより近づき、自分が心地よいと思える暮らしかたや働き方を実現するための学びや探究を行うラボです。
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