他者と共に自分の「ここちよさ」を探る~「子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会」レポート~

投稿者:スタッフポラリス

他者と共に自分の「ここちよさ」を探る~「子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会」レポート~

子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会」は、2012年から開催し続けているPolaris定番の座談会です。2021年8月に学び事業「自由七科」が立ち上がり、現在は、自由七科の「思考と対話ラボ」のコンテンツの一つとして開催しています。

一人ひとりの「ここちよさ」に向き合う場

「仕事」か「子育て」かの二者択一ではなく、誰もが「ここちよく」はたらける社会を目指してPolarisは始まり、くらしの価値を再編集するスキーム構築や「地域×はたらく」のスケールアウト、チームによる「仕事のしかた」の再定義を経て、「はたらく」と「暮らし」が分断されない仕事をつくってきました。

しかし、「ここちよく」はたらくとは、どんな状態でしょうか?本座談会は、「はたらく」や「暮らし」のそれぞれのここちよさに向き合うための対話の場となっています。

「子どものいる暮らしの中ではたらく」と聞いて、ピンとくるのは子どもをもつ女性が多いようで、本座談会の主な参加者は女性。開催すると、「こんな場が欲しかった」と言ってくださる方も。しかし、この座談会はそうした子育て中の女性だけを対象にしたものではないのです。たとえば、子育て中の男性はどうでしょうか。コロナ禍で在宅ワークが進み、今まで見えていなかった子どもの姿や、子どもがいる日常の暮らしが見えるようになった人も多いと思います。あるいは、子どもがいなくても、「いまの社会で子育てをしながらはたらく」とはどういうことなのかを想像してみると、社会的に弱い立場にいる人たちの抱える課題にも繋がるのではないかと考えています。

ここちよいはたらき方を考えるために、「子どものいる暮らし」という視点を用いてはいますが、そこで出てくる理想やそれを実現するための障壁は、子どもの有無に関係なく、多くの人のはたらきやすさに繋がるのではないかということを、回を重ねるごとに感じます。

異なる背景を持つ人と出会う


平日の夜に開催した「子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会」オンライン

平日の夜のオンライン座談会では、コロナ禍を機に在宅ワークになった男性や子ども食堂を開いている男性、パートナーが転勤族の女性などにご参加いただきました。参加者のお子さんの年齢も未就学児から中学生まで様々。住まいやはたらき方に関わらず、多様な人が集まってくださったのは、オンライン開催ならではの成果でした。中には、パートナーには直接聞きづらい、男性目線の話が聞けてよかった、という感想もありました。


町田市で開催した「子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会」参加者の皆さん

一方、町田市のCOMMUNE BASE マチノワで開催された座談会は、平日午前中に実施したため、幼稚園~小学生の子を持つお母さんが中心に参加くださいました。専業主婦の方もいれば、フリーランスや会社員、保育士さんなど、一人ひとり違った暮らし方・はたらき方をお持ちの方々です。しかし、本座談会のように、普段とは異なるコミュニティの中で共通の課題意識を持った人たちとだから生まれる「程よい距離感」の対話は、暮らしの課題が自分だけのものではないことを認識させてくれ、同志がいる心強さを与えてくれます。

コロナ禍をきっかけに、オンラインでの座談会を取り入れるようになりましたが、「程よい距離感」の対話は、リアリティを持って参加者の一体感を高めてくれていました。

正解を求めず対話を重ねる

この座談会は「ワールドカフェスタイル」という方法を用いて行います。相手の言葉を否定しない、一人ずつ話し、話している人に被せて発言しない、などいくつかルールがありますが、答えを出すわけではなく、対話を通して意見を重ねることを大切にしています。本座談会で話すテーマ(=問い)は3つ。実はこのテーマは2012年以来、ずっと変えずに、同じテーマで話しています。テーマは同じでも、その回の参加者によって、出てくる言葉が変わってくるから不思議です。しばらく経って再び参加して、自分の気持ちの変化に気づいたりする人も。リピーターも大歓迎です。


一人ひとりの付箋をシェアすることから対話が始まります

ワールドカフェスタイルのルールを理解したら、本題に入っていきます。投げかけられる問いについて、自分なりの考えを付箋に書き、それらを共有しながら、お互いの思いを深掘りしていきます。

自分で話していたり、誰かの話を聞いていたりした瞬間にパッとアイデアがひらめく――会場で対面開催した際は、そんな目が白む瞬間の表情が見えるのが魅力の一つかもしれません。

一方オンライン開催では、付箋に考えを書き込んで共有というスタイルではなく、少し考える時間とって、思いが整った人から話し始めるというスタイルです。ポンポンと発言が飛び出すリズム感は、会場での開催に劣りますが、その分、ゆっくりと静かに自分を見つめることができます。なんと言っても、暮らしのど真ん中にある自宅で参加するのですから、非日常な会場で考えるより、もっとリアルに、自分の求めるここちよさに思いを巡らせることができると思います。


グループワークで出た意見は他のグループにもシェア。毎回異なる意見が交わされています。

みんなのここちよさが未来をつくる

もし、今の暮らしやはたらき方の中にモヤモヤしていることがあれば、ぜひ座談会で話してみてください。モヤモヤがはっきりと言葉にならなくても大丈夫。話すことが難しければ、まず聞くだけでもOKです。誰かの話を聞いて、捉えようのない思いの輪郭が見えてくることもあります。話すことで、自分がこんなことを思っていたのかと初めて気づくのもよくあることです。

また、私たちが座談会を開くのは、今はたらいている私たちの「ここちよさ」を探求するためということもありますが、「子どもたちにどんな未来を残したいか」というところにもあります。少なくとも今よりもよりよい社会を子どもたちに引き継ぐとしたら、それは私たち大人一人ひとりのここちよさの先にあるように思います。子どものいる暮らしの中ではたらくことが、もっと当たり前で、多様なはたらき方を選べるような未来であってほしいです。

そのためには、まず自分を知ることです。自分がどのようなはたらき方や暮らし方を求めているのかを考えて言葉にしてみることが大切なのではないでしょうか。そして、私たちは他者と共に生きています。ですから、他者のここちよさやここち悪さを知ることも大切です。他者の視点から学べることもたくさんあります。一人でじっくり考えてみることもいいですが、それをアウトプットする面白さも座談会で感じてもらえたらいいなと思います。自由七科の講座や座談会を何度も開催してきて感じるのは、「こんなこと言っても大丈夫かな」と心配せずに、思いを受け止めてもらうことはとても癒しになりますし、自分が一歩を踏み出す力になるなということです。

今回は座談会のレポートでしたが、自由七科では座談会以外の場も同じ考えをもってつくっています。この記事を読んで、何か感じられた方はまずは座談会にご参加いただき、より深く対話を重ねてみたくなった方はぜひ連続講座の方も参加してみてくださいね。

今後の座談会開催予定

会場座談会・オンライン座談会とも、テーマを増やしながら開催していく予定です。

次回開催についてはこちらをご覧ください。

子どものいる暮らしの中ではたらくを考える座談会


また、Polarisの学び事業を担っている自由七科による連続講座も定期開催しています。

「ライフストーリー・インタビューによる社会学入門~『半分幸せ』から探る個人と社会の関係性~」

【内容】
「ライフストーリー・インタビュー」という手法によって、その人の人生を語りによって振り返りながら、個人と社会の関係性を学びます。社会学というアカデミックな学びを通じて、個人の内面をも捉え直すことのできる講座です。