【イベントレポート】地域協創プラットフォームキックオフイベント~ パネルディスカッション「知る・つながるで目指す協創社会」~

投稿者:polaris_iwatani

【イベントレポート】地域協創プラットフォームキックオフイベント~ パネルディスカッション「知る・つながるで目指す協創社会」~

去る2024年1月19日(金)、吉祥寺エクセルホテル東急にて「地域協創プラットフォーム」のキックオフイベントが執り行われました。地域協創プラットフォームは、西武信用金庫が発足させた、地域の子育てや福祉の課題に取り組んでいる個人や団体が集う相互扶助の場です。地域社会の課題解決等ソーシャルビジネスに取り組む各種法人(公益・社会福祉・NPO等)や個人、課題に対する商品やサービスを提供する企業・自治体や各地域の協議会、投資・寄付活動を行う諸団体等が参加対象になっており、今後はセミナーや交流会など、各種イベントの実施が予定されています。

キックオフイベントでは、「知る・つながるで目指す協創社会」をテーマに、パネルディスカッションが行われ、非営利型株式会社Polaris創業者の市川望美が登壇しました。

助け合い、支え合いながら、地域の課題に取り組む~地域協創プラットフォームの創立~

会場では、1月1日に能登半島を襲った地震の被災者へ黙祷が捧げられた後、西武信用金庫理事長・髙橋一朗氏が、地域協創プラットフォームへの設立の経緯について、次のように話しました。

「我々信用金庫の原点は、江戸時代の後半から明治時代にかけて設立された協同組合です。先人たちは地域で集まり協力し合うことで、さまざまな時代の大きな変化に対応しようとしました。時は流れ、行政の手が行き届かない地域の小さな問題や課題に、皆様のような方々が一生懸命に取り組んでいらっしゃいます。私どもは、互いに協力し合うという協同組合の原点になっている考え方と、皆さんが日頃お取り組みになっていらっしゃる活動は非常に親和性があり、こうした活動を信用金庫として協力すべきだと以前から考えておりました。

地域協創プラットフォームは、西武信用金庫が30年かけて培ってきた、地域のお客様同士を引き合わせる出会いの場であり、地域で活躍している個人の方や団体が出会うことにより、それぞれの強みを持ち寄り、協力し合っていただきたい。そうした方々が地域で活躍し、それぞれの事業が成長していけば、豊かで、暮らしやすく、働きやすい世の中を実現していける。そして、21世紀の大きな変革時代を皆さんと一緒に乗り切っていきたいと思っています」

Polarisの事業成長に欠かせなかった「3つの協創」とは

次に、本イベントのメインであるパネルディスカッション「知る・つながるで目指す協創社会」が行われました。パネリストは子ども食堂を手掛けている方や、医療的ケア児を預かる認可保育園を運営されている方、障害者の社会進出を支援されている方、西武信用金庫髙橋理事長、Polarisファウンダー市川の5名。パネルディスカッションでは、「協創」というキーワードに基づいてパネリストの方々がそれぞれの事例やご自身がされた経験などが披露されました。

最初のテーマは、協創や連携を行ううえでの成功のポイントということで、市川からはPolarisが13年間事業を続けてこられたポイントとして「広げる・深める・ジャンプする」の3つの協創があるとし、次のように語りました。

市川「まず『広げる』協創ですが、Polaris創業と同時期に、日本で“コワーキング”という概念が広がり始めました。Polarisは働き方の多様性の表現の一つとして、コワーキングスペースを運営していたこともあり、この概念をムーブメントとしていくために、志を同じくする人たちが集まり、「コワーキングカンファレンス」を開催したりしました。まさにこのときの協創は、コワーキングを通して働き方の多様性を「広げる」ためのものでした。

次に、『深める』協創とは何か。これは同じような事業テーマを持っていたり、テーマは異なるものの近しい事業フェーズにいたりする人たちと開いた様々な勉強会や共同研究です。事業が軌道に乗るにつれて出てくる課題感や現実的な悩みを持ち寄る場は、自分たちが向き合うべきことを深めるうえでとても有益で、のちのPolarisの経営にとてもいいヒントになりました。

最後は『ジャンプする』協創、つまり飛躍のための協創です。これは、偶発的なことが多く、いただいた話やご縁に乗ってみたり、今回のような多くの方に出会えるような機会に積極的に出ていったりすることで、結果的に新しいアイデアや事業が生まれることにつながってきました。

13年の歴史を改めて振り返ってみて、Polarisがここまで来られたのには、広げる、深める、ジャンプするという3つの協創があったと思っています」

他のパネリストの皆さんからのお話にも共通していたのは、とにかくつながってみること。ただビジネス的なつながりではなく、「私たちにはこういう想いがあって、こういうふうにして問題を解決したい」といった、それぞれが大切にしているポリシーやミッションを発信し、そこへの共感から生まれたつながりであり、それが緩やかに続いていくことでさらなる共感やつながりを生んできたようです。

ネットワークを開いたら、閉じることも大切

続いて、事業を続けてきた中で失敗した点や苦労した点、問題や課題だと感じた点について、「協創」をキーワードにパネリストらから発表がありました。

つながりを生み出すことや維持していくことへの苦労・課題に対して、市川は次のように話しました。

市川「旗を掲げると人が集まり、共感が生まれます。しかし、その旗を振り続けるのは、リソースやモチベーションという意味でもすごく大変です。最初は新鮮ですが、だんだんと負担を感じるようになります。つながりづくりはもともと手間がかかることで、ある種の付加がかかることでネットワークが育まれることもありますが、結構ジレンマがあると感じています。 つながること、つなぎ続ける場を持ち、維持することに、自分たちなりの意欲とリソースを調達する点には苦労があります。

ビジネス的な連携だけでなく緩やかなつながりやネットワークつくることを積極的に評価したり、金融機関がリソースの面でバックアップしてくれると、より協働の活動は生まれやすくなると思います。非財務的なもの、緩やかなつながり自体を評価するための仕組みもほしいところです。そうすれば、今回のような、金融機関による協働プラットフォームは、より機能していくのではないでしょうか」

仕事軸のコミュニティを柔軟に変容させながらも、13年間続けてきたからこそ見える視点――。ネットワークを構築しても、維持し続けることの課題感に多くの人が共感されているようでした。

「弱さ」から生まれるつながりには機会を引き寄せる「強さ」がある

パネルディスカッションの最後には、パネリストの皆さんから「協創=つながり」に対する想いとともに、来場者へメッセージが伝えられました。

市川「Polarisは、子育て中のスキルのない女性たちが始めた組織で、今年で13年目です。スキルがないことや社会的立場の弱さがあったからこそ「つながり」を求めた部分があり、つながろうとしてきたからこそ、ここまで続けてこられたのかもしれません。

ここまで来るには、社会の流れ、空気、私たちに関わってくれる人たちや組織の外部環境も含めて力にしてきたことがあるとともに、いろんな方の支えがあったおかげです。ここにいる皆さんと、何か一つでも共有してつながることができたら嬉しいです」

思ってもみなかったつながりはユニークな取り組みを創出し、自分たちの苦労が癒される瞬間もあると市川は言います。個人や一つの団体では難しいことも、自分たちの弱さを受け止め、関わる人の内外を問わず多様な形でつながり続けていくことで、新たな事業の気づきやステップアップにつながるきっかけが見つかるかもしれません。

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